こんにちは。大賀信幸です。すべては観察から始まる。
不動産投資 失敗したら
何事も成功の定義と失敗の定義って難しい。ましてや投資となるとその定義はますます難しいと感じます。
利益が出たら成功なのか。損失が出ると失敗なのか。
例えば、不動産価格1000万円で、家賃収入が月額10万円の物件があると仮定します。
- 不動産価格 1000万円
- 月額家賃 10万円
- あれこれ経費 15万円
リフォーム費用込の戸建賃貸ではだいたいこれぐらいのボリューム感です。駐車場があれば店子は付きやすいとか。駅から近くは、店子は付きやすいけれども、駅近ではこの価格帯では手に入らないかもしれません。
この1000万円の物件を現金で購入すると仮定します。これもありえる話です。するとね、月額10万円の家賃収入ですから年間家賃収入は10万円✕12ヶ月=120万円となります。ここから固定資産税、都市計画税などは約10万円必要とします。火災保険やその他もろもろを年間5万円とします。
すると、年間利益は120万円−固定資産税等10万円−火災保険など5万円=105万円となります。かかる経費がこれ以上ないとすると、年間利益額は105万円になると思うでしょう。
しかし、ここから減価償却できます。話を簡単にするために、上記1000万円の不動産の土地と建物の割合を、1対1とすると。金額では土地代500万円、建物代500万円となります。土地は、減価償却はありませんから、建物の500万円に対して減価償却です。
木造建築物の耐用年数は22年とされています。この22年を超える木造建築物の減価償却期間は4年です。上記500万円の不動産が築古で、築年数が22年を超えている場合は、500万円÷4年間=125万円となります。
つまり、年間家賃収入からあれこれ経費を引いた金額は、105万円でした。ここから、減価償却費用を125万円引き算します。すると105万円−125万円=マイナス20万円になります。
利益や損失だけをみると、初年度では20万円の損失になります。果たしてこれ、不動産投資として失敗でしょうか。
僕はこれ、不動産投資家としては大成功だと思うのです。なぜなら、年間手元キャッシュで105万円もの入金があります。普通ならこの105万円に対して所得税がかかります。
しかし減価償却を加味すると、マイナス20万円となり所得税は支払う必要はありません。
手元現金を残してなおかつ、所得税を払わない感じになります。
この逆もありえます。
で、どうなるの
上記は税務上損失であるけれども、手元に現金が残ることを想定しました。この逆は、怖い話になります。
- 不動産価格 1000万円
- 月額家賃 10万円
- 借入金 1000万円
- 金利 2%
- 返済期間 10年
- あれこれ経費 15万円
この条件ではどうでしょう。先の例と違うのは、購入するときに手元現金ではなく、全額借り入れとした処です。
初年度の金利は1000万円✕2%として計算すると20万円となります。元金返済額は、1000万円を10年間で返済するのですから、1000万円÷10年間=100万円となります。固定資産税や都市計画税、火災保険などは先の数字と同じとします。
収支計画をします
年間家賃や経費も減価償却も変わらずです。するとね。マイナス20万円の損失になります。そして、手元現金はどうなるってことなんですが。
年間家賃120万円−あれこれ経費15万円=105万円。この105万円から減価償却費を引き算すると、105万円−125万円=マイナス20万円。ここまでは借り入れするしないに関係なく、同じです。ゆえに税務上では年間マイナス20万円の損失になります。
しかし借り入れはなしの場合は、年間20万円のマイナスであったけれども、手元に105万円の現金が残りました。
借りれするとどうなのでしょう。計算します。
借り入れ初年度としますと、金利20万円+元金返済額120万円=140万円となります。この140万円は実際に出ていくお金です。
初年度では、経費支払った後のお金が105万円に対して、返済元利を引き算すると、105万円−140万円=マイナス35万円となります。
で、どうしたの
これは大変なことです。なぜなら損失が出て、所得税の支払いはないのですが、手元現金が枯渇します。マイナス35万円ものお金が足りなくなります。
これをキャッシュアウトとか言います。
で、どうするの
先の例は減価償却4年として初年度を計算しました。実際には5年目ではどうでしょう。もう減価償却は終わっているので、年間125万円の償却は出来なくなります。5年目になると返済元金は半分の500万円になっています。この500万円で金利を計算してみます。
返済残金500万円✕金利2%=10万円。返済元金100万円+金利10万円=110万円となります。
年間家賃収入は120万円−あれこれ経費15万円=105万円となります。あれこれ経費以外に経費になるものは上記計算の金利10万円です。105万円−10万円=95万円となります。
減価償却はゼロですから、この95万円が5年目の利益になります。利益には税金がかかります。
なおかつ、年間元利返済額は110万円と計算されました。
この95万円−110万円=マイナス5万円となります。
ここに、経理上では95万円の利益が出ているが、年間では5万円のお金が足りなくなっている状態です。
これを勘定あって銭足らずなんて昔の人は言いました。
規模が大きくなると、黒字倒産ってことにもなりかねません。
まとめ
不動産投資で失敗したらってことですが。失敗とは、利益損失に関係なく、お金が足りなくなることでしょう。この状態になれば、破産するしか方策はないのではないか。
正にこの勘定あって銭足らずが失敗なのでしょう。この状態にならないように、計画段階で判断するのが最善手です。